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「フレイムスピア!」
女性はその虎ゴリラの一瞬の隙を見逃さず、突然厨二臭い技名らしき台詞を吐き、手元から槍のような炎で出来た物体をゴリラに向かって放ちだした。
「なるほど…、こちらの世界の方でしたか」
そりゃそんな反則な魔法使えたら、虎ゴリラなんて怖くはないのだろう。
炎の槍はむせている虎ゴリラの腹部に命中、虎ゴリラの体全体は炎に包まれ内部からも外部からも焼き尽くしていった。
次第に力を失った虎ゴリラは地面に倒れこんでしまう。
酷い事に、倒れた後も暫らく炎がずっと燃え盛っていたのだ。
なんて恐ろしい魔法なのだろう…。
「すげぇ…倒しちゃったよあの女の子」
俺が逃げる事しかできなかった虎ゴリラをあんなにも簡単に…。
この世界の住民はこんなにも強い…というよりか、反則的な力を持つ人ばかりなのだろうか?
直記がいたらなんて言っただろうか、きっと『気持ち悪いのバーゲンセールだな』とか言うに違いない。
「大丈夫ですか?救助にきましたよ!!」
女性は虎ゴリラを倒したのを確認すると、俺にそう大きな声でそう呼びかけてきた。
「救助?」
もしかしてあの女性はこの世界の警察的存在の人なのだろうか?
そうなるとちょっとだけまずい、助けてもらったので感謝の言葉を一言だけでも言いたいのだが…。
「おーい、そっちの方に誰かいたのか!?」
「うん、一人いた!!」
すると俺の近くにある出口とは反対の北出口からぞろぞろと救助隊、もしくは警察らしき人達が現れた。
「これは…間違いないな」
ここで保護される訳にはいかない、何故かというと俺が今着ている服、リュックサックの中身、そう…俺の持ち物は今ショッピングセンターから盗んだ盗品で固められているのだ。
もし後でこれが盗品だとばれて牢屋行きなんて事になったら元の世界に帰る所の話しではなくなる。
俺のやってる行為は火事場泥棒という立派な犯罪なのだ、言い逃れはできない。
「…逃げるか」
助けてもらったのに礼を言わない事と、盗んだ事に良心を痛めながら、俺は南出口からショッピングセンターを跡にした。
「あぁ待って!!」
「おい、どうしたんだ!?」
「保護しようとしたんだけど、なんかどっか行っちゃった…」
「まぁいいんじゃね?ゼクセルのおかげで外もほぼ危険なんてないし、その内誰かに保護されるだろうから大丈夫だろ」
「だといいけど…」
「さあもう次行こうぜルク」
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