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「あー、最高…」
湖の表面に浮かびながら小さな声でそう呟いた。
体を一度綺麗に洗った後、適当に泳いだり、潜ったりしたりで楽しみながら時間を潰した。
「さて…そろそろ乾いたかな?」
日の光が木々に遮られ、衣類を引っ掛けている場所に光が差し込まれない事に気付いた俺は、適当に落ちている枝木を集め、ショッピングセンターから持ってきたライターを使って火を起こした。
その火に衣類を近づけ、衣類が乾くのを待つために時間を潰していたという訳だ。
「ちょっと湿ってるな…」
だが着れない事もないくらいの湿り具合だった。
後は自然に乾燥するのを待てばいいと思ったので、俺はまだ少し湿っている衣類を着る事にした。
「さて…後は腹ごしらえだな」
もう結構な時間何も食べていなかった上に、水を補給できるポイントは少ない。
故に俺はここで食べてから行く事にした。
「とりあえず…缶詰だけでいっか」
「スピピ!」
「ん、お前も食べるか?」
俺はスッピーの分とで余分に缶詰を取り出し、水で湿らせた枝木をうまく組み立ててそれを火に近づけ、缶詰を置いて温めた。
「んー我ながらなんてナイスな発想なんだ」
「スピ」
原始人とかはこうやって暮らしていたんだなとしみじみ思ってしまう。
「っていうかお前…何で俺についてくるんだ?」
「スピ?」
最初、俺のくっさい体に引き寄せられてついてきたかとも思ったがどうやら違うようだ。
綺麗になって臭いもほとんど無くなったのにも関わらず、スッピーは俺から離れようとしない。
まぁ元々臭いにおいに引きつられてってのが意味不明だったのだが。
でもそうなると何故こいつは俺の前に現れ、俺についてきて離れようとしないのかが疑問になってくる。
それにまだ出会ったばかりだというのに。
「もう一度聞こう、お前は何だ?何故俺に付きまとう?」
「スピ」
勿論答えられる訳もなく、スッピーは只尻尾を左右に揺らす事しかしなかった。
只の興味本意だろうか?
「でもこいつ…見る限りまだ子供っぽいんだよな」
子供なのに親元から離れるドラゴンっているのか?
まずドラゴンかどうかも怪しいが。
「まぁ考えても仕方がないか、分からないものは分からないんだし…、ついてくるのはもうしょうがない」
「スピ」
その後、完全に温まった缶詰をむさぼり、腹が微妙に膨れた俺はリュックサックを背負って出発する準備を行った。
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