第二章 Φ-ファイ

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リュックサックを背中に背負った時、近くの草陰からがさがさっと草を掻き分ける音が聞こえた。 俺は何の音だろう?っと体を九十度捻って音がなった方向に振り向いた。 「……」 俺は目をこすった、何故ならそこには普通なら考えられない生命体が存在していたからだ。 まだモンスターならこんなに驚かず、速攻で逃げていただろう。 だが…俺が振り向いた先にいたのは…。 「グルルル…」 「……」 そのギャップとも言える鳴き声に思わず目が点になってしまう。 頭は鶏のような…ってかまんま鶏だった。 だが体は何故かプロテインを飲み過ぎなんじゃないかと思うくらいムキムキで、ボディービルダー並みの筋肉質の男が全裸で立っていたのだ。 つまり頭だけが鶏、体は人間のボディービルダーという訳だ。 なのに発した声が「やぁ、僕は鳥人だよ」とかどこぞのお笑い芸人がやってるような喋り方でもなく、「コケコッコー」と本当の鶏の鳴き声でもなく、「グルルル…」だったのでびっくりした。 「シュ、シュールすぎる…」 「グルルル…」 鶏?人?、とりあえずこの生命体はずっと俺に向かって直立不動のまま唸っている、正直どんな生命体よりも恐ろしい光景だった。 「こ…こんばんわ」 とりあえず喋れるかどうか確認するため挨拶をすると…、 「グギャアアアアアァァァァァァァァ!!」 と叫びながら、鶏の頭が三倍に膨らみ、口ががっぱりと開いて俺に向かって噛みつこうとしてきた。 俺は…、 「う、うわぁぁぁぁああああああああああああああ!!」 恐怖するしか出来なかった。 だってこんな意味不明な生命体…漫画やアニメの世界でもいないんですもの…。 とりあえずわかったのがこの鶏ボディービルダーはモンスターという事。 そして必然的にここが俺のいた世界ではないという事を示していた。 「にににに、逃げるぞスッピー!!」 だがスッピーは俺のリュックサックの中に既に退避していた。 「俺に走れと!?」 「グギャアアアアア!!」 「く…くそ!!」 俺は渋りながらも、スッピーの体重分余計に重いリュックサックを背負って森の中へと走り出した。
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