第三章 遡る思い

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「一つ聞いていい?」 「何だ?」 「その異次元空間内で男の人に会わなかった?」 「いや…誰にも会わなかったが」 「そっか…」 どうして突然そんな事を聞いてきたのだろう、最初に俺を他の世界から来たのか聞いてきた事と何か関係があるのかもしれない。 「それでレイ、彼…どうするの?」 「うーん、戦えないんだったら置いていく訳にもいかないしなぁ、一緒に引き返すにしてもここからじゃ凄い手間だし、とりあえず連れていくしかないんじゃないかな?」 「まぁ…そう言うと思ったわ」 その確認をとるとアシェリーは俺達を置いて先へと進み始めた。 追って俺とレイも歩き始める。 「そういや二人はどうしてこの森に来たんだ?」 「依頼があってここに来たの」 「依頼?」 「そう――――」 その後レイは依頼の内容を道を歩きながら詳しく説明してくれた。 何でもこの守護の森のゲートをくぐる前には、森を守るように構えている『フィス』という小さな村があるらしい。 その小さな村に最近、巨大なモンスターが毎夜食糧を求めてやってくるのだそうだ。 もし食糧を与えない場合は大暴れするため、仕方がなしに今まで食糧を与えてやり過ごしていたらしいのだが、遂に食糧が尽きかけ、このままでは村の住民が食べる分が無くなってしまうとの事だった。 そしてそのモンスターは守護の森からやってきているらしく、いつの間にそんなモンスターが住み着いたのかはしらないが退治のためにここに呼ばれたらしい。 全然その村…森守れてないじゃんという突っ込みはあえてしないで大人しく話を聞いた。 「まぁ大体わかった」 「本当、よかった」 「って事はあんたら相当腕利きなんだな、結構な実績があるんだろう?」 「んっと…、まぁね」 レイは少し照れながら笑顔でそう言った。 ちくしょう…三次元なのに見惚れてしまった。 「…それともう一つ聞いていいか?」 「何?」 「前例がないのにも関わらず、俺に異世界から来たかどうかを尋ねたのは何でだ?何か身に覚えがあるからなのだろう?」 どうせだったので俺は聞きたかった事を聞く事にした。 だがそれを言うとレイは少ししんみりとした表情に変わった。 そして俺は激しく後悔した。 こ…これは触れてはいけない事だった!…と。
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