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突然なんだと思われる方もいるかもしれないが、幼稚園のときにクレヨンで描いた将来の夢は、ケーキ屋さんだった。
ケーキ屋さんになったら、ケーキが食べ放題だと思ったからである。
小学生の時、卒業文集に綴った将来の夢は、いるかの調教師だった。
いるかの背に乗って、心を通わせてみたかった。ちょうどそのころ、私はかの名作映画「フリーウィリー」をビデオで見たところだった。
中学生の時、いるかの調教師になりたいという夢が、盲導犬の調教師になりたいという夢に進化を遂げた。
そのころ私は水泳教室を辞めた。
そして暇になった放課後、ドラマやバラエティ番組を見るようになった。
その中でも毎週欠かさず見ていたのは、「動物奇想天外」というバラエティ番組で、しばしば盲導犬の特集が組まれていた。
それを見て、盲目の人々の役に立ちたいという崇高な目標が、私の中に生まれたのであった。
今思えば、この頃が私の最も純粋で未来への希望に溢れていた時期だった。
そう考えるに足る理由は数多あるのだが、これは余談なので今回は割愛します。
とにかく、そうして夢を抱いて高校に入学した私だったが、成長して冷静に物事が考えられるようになったことで、現実の壁の高さと厚みに気付いてしまった。
私は動物が好きだ。しかし動物は私が嫌いである。
私がどんなに友好的に、下手に、「私は無害だよ。だからそのふさふさのしっぽを触らせておくれ」と近付いても、動物たちは唸って牙を剥く。もしくは一目散に逃げる。
犬然り、猫然り、フェレットまでも然りだ。
私は、盲導犬の調教師になることを諦めた。
そして代わりに、留学して英語を身につけ、語学力を生かした仕事をしたいと思うようになった。翻訳家なんていいなぁ、とも考えた。
ちなみにそのころ、有名な子供向け英国ファンタジー文学「ハリーポッター」シリーズが話題沸騰中であった。
そして何の因果か、私は公立高等学校の英文科に在籍していた。
高等学校卒業後、私は野望のままにカナダへ飛んだ。
華々しき留学生活の始まりである。
日本を発つ飛行機の中で、青い目のメンズとの恋を夢見た。
そして3年後、「世の中のカップルというカップルはすべからく爆発してしまえ」という呪詛を心の深いところに根付かせて帰国した。
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