晴。

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「アンタ、絵の才能あるんだな」 「そんな……こと、ないです」 葵は俯くと、制服のスカートを掴む。手から出た汗で湿ていて、震えていた。 「そんな恐がらんでいいって。僕、こんな髪色だけど、地毛なだけだし」 葵の肩をぽんっ、と軽く叩く。その瞬間に葵はびくっと跳ねた。 葵はもう泣きそうで、正直なところ、早くどっか行って欲しい気持ちでいっぱいだった。 男子の目線は相変わらずスケッチブックに向けられていて、突然、首を傾げだした。 「上手いし、凄く綺麗だけど、これ、何か物足りない絵だなあ」 「あ、アナタもそう思いますか?」 葵は、やっぱり!という表情で俯いていた顔を男子に向けた。 「その絵、美術の先生とかは良いねって言ってくれるんだけど、私的には何か物足りないないの。でも、何かを付け足せば余計になる気がしてなかなか進まないの」 急に、葵の心中から吐き出されたように葵は喋り出した。 葵自身、喋ってから、気付いた。
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