晴。

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「アンタ、喋れるんじゃん」 男子が葵に視線を向けた。柔らかな笑みだった。 「え」 「僕、相宮 太陽って名前なんだ。アンタは?」 「私は……葵。浜辺……浜辺 葵」 「おっ、可愛い名前じゃん」 男子はスケッチブックを差し出しながら、また笑った。 よく、笑う男子だな。と思った。 葵にとって男子とは、いつも不機嫌で、笑う時といえばばか笑いだけであるという偏見を持っていたからだ。 「……どうも」 葵は、頷きもせず、瞬きをした。葵なりに、照れていたのである。 (なんだ、悪い人ではなさそう……) 葵はふっ、と息を漏らすとスケッチブックを手提げカバンに入れた。 「お前、いつもここに来るのか?」 太陽が、葵に問う。 「うん……」 「僕と、一緒だ」 太陽はベンチを立つと、プールの水に爪先をつけて水を飛ばした。 「え、」 「僕もしょっちゅうここに来て授業サボってるんだ」 太陽が振り向くと、 彼の得意気な雰囲気の顔は太陽に照らされていた。
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