9人が本棚に入れています
本棚に追加
/55ページ
少年が、最後の学年に進級する年の入学式は、曇りという微妙な天気だった。
(あー…ついてないな。今年の一年生)
入学生を哀れに思いながらも、少年は入学式を自分には関係ないと言わんばかりに一人、過ごしていた。
友達と呼ばれる男共は大半が部活勧誘の為のチラシ配りで、一部は可愛い新入生を探しに行く…なんて言う間抜けな奴もいた。
部活に入っていなければ、可愛い女の子なんて興味ない少年にとっては、心底どうでもいい行事である。
入学式なんて“あぁ、これで先輩達がいなくなった分の人数の埋め合わせだな”程度。
『なんだよお前、入学式に楽しみねぇの?つまんない奴』と散々周りから言われた。
“不愉快な。そもそも鼻の下伸ばして入学式に見に行ってんじゃねえよ”と少年は思っていたが。
少年は誰もいなくなりつつある校舎の中で、ただ一人だけで歩いている。
もうすぐ、式が始まる。
しかし、その時である。
少年の目に飛び込んできたのは、極端に真新しい制服に身を包んだ少女だった。
新入生だろうか。辺りを見渡し、焦る表情をしている。
(迷ったのか…?いやいや、校門から体育館まで直ぐだぞ?迷う筈がない)
最初のコメントを投稿しよう!