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「ん。美味い。」
唇のはしに、メロンパンのクズをつけた太陽はニッと笑う。愛らしく、どこか幼げに見える太陽の笑顔は、葵の頬に熱を灯らせた。
太陽は、葵の真横に座る。足を立てて。右手の袖から出る腕は、葵の二の腕あたりと密着した。
葵の心臓の動きがいつも以上に早くなる。異常に。熱いから?と葵は勘違いするも、ただの熱いだけではない…と、葵は横にいる太陽を見て思った。
「これで、おあいこな。」
「え、何がおあいこなの」
太陽は、きょとんとしながら真面目に物言う葵を見て、お笑い劇場のようにベタに転がりそうになった。
「だから、僕が君のメロンパン勝手に食べたから…君が敬語使わなかったこと、謝らなくていい」
用はそういう事。メロンパンを食べたのは、敬語を使わなかった事を気にしている葵への配慮だった。
…よく、少女漫画で見られる現象なのだが、太陽は一度やってみたかったのだ。
「…?」
どうやら、鈍い葵の心にはそれは擦りもせず、ただクエスチョンマークが脳内に広がるだけ。
太陽はハァ、とため息をつく。
「君、絶対、少女漫画あまり読まないだろ…ま、いいけど」
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