存在。

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太陽は、納得したようにそう言う。すると葵は、メロンパンを美味そうに頬張る。 「僕に敬語なんて使わなくて良いから。こんな時ぐらい堅苦しいのは止してよ」 葵は太陽の優しげな声を聞き、頷くしかなかった。まあ、“上下”という隔てる壁がなくて話す方が気が楽だからいいか。と葵自身、納得してしまう。 そして、何てなくこの会話は終わり、また二人の間は静かになる。 「…なぁ、」 またしても静けさを破ったのは彼であったが。 太陽は、葵を呼びかけるように言葉を発すると、葵は口内にあったメロンパンの欠片を飲み込んでから返事した。 「なあに」 「君、ここに来て楽しい?」 太陽の問いは、聞かれて当たり前だろうという内容だった。 葵は別に驚きも焦りもせず、淡々と答える。 「…楽しいってか、私にはここしかないの。」 葵には“居場所”と呼ばれる場所がない。全部、葵を空気にさせるような場所しかない。 葵を葵として見てくれるのは…美術室とプールだけ。 その美術室も…授業以外は閉められている。 「そっか」 太陽はそれ以上聞かなかった。 「貴方はどうなの。」 「え?」 「貴方は、ここしか居場所がなくなったの?」 疑問だった。 毎日ここに来ていたが、太陽と出会うようになったのはこの間が初めて。 何故、太陽がここに来るようになったのか不明だった。 「別に。楽しみがあるから来てるだけ」 深い意味もなく、答えはそれだった。 “楽しみ”葵はそれが何の事か解らなかったが、聞かなかった。 太陽は、葵のメロンパンを勝手に千切って自分の口に入れる。どこか頬は赤らんでいた。 「んー、やっぱりメロンパンはメロン味がいいな」 太陽は食べておいて、そんな感想を漏らした。
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