黙。

2/6
前へ
/55ページ
次へ
「ねぇ」 誰もいない放課後の教室は、茜色の夕日に照らされていた。 人から話しかけるのは久しぶりで、良い意味でむず痒くなる。 葵を呼ぶのは太陽以来であった。 葵は丁度、帰りの支度をしていて、これからプールへ行こうとしていた。 最近、美術室よりプールの方が、葵を癒している。 「なにかな。」 葵は声をかける人の方へ向く。そこには三人の女子がいて、一人はリーダー各だった。 「あんた、相宮先輩と仲良いの?」 (相宮…あぁ、あの人のことか) 普段、“ねぇ”“あなた”“君”という呼び合いなので、すっかり名字なんて忘れてしまっていた。 「どうなの?」 リーダー各の女子が葵に聞く。 「仲良いのかは解らないけど、よく話するよ。この間メロンパン食べたよ」 葵は、話かけられたのが嬉しくて純粋に、正直に話した。しかし、この純粋なる葵の発言が、仇となってしまう。 「…」 女子達は無言になり、表情は一気に険しくなる。 「相宮先輩と仲良くしないで」 リーダー各の女子から、そんな事を言われた。
/55ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加