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少年は、少女の様子を伺った。
やはりキョロキョロと辺りを見渡していて、何かを探しているようだ。
見るに耐えれなくなった少年は、仕方なく少女の近くへと歩み寄った。
「…ねえ、どうしたの。」
少女は少年の顔を見る。白い肌をして、髪はクセがかかっていた。
「あの…体育館を探しているのですが…」
やはり、体育館を探していたか…と少年は苦笑いする。
「すみません…私、方向音痴なんです…」
弱々しく、申し訳なさそうに物言う少女の声は、つくりものではなく、何故か助けてあげたくるような物言いだった。
「よし、一緒に行ったげるから着いてきな」
少年は少女にそう言うと、彼女が着いてくるのを確認して、歩いた。
少女は、少年の大きな背中の後を必死で着いていく。
体育館は、ほんの秒単位で着く場所にあって、あっという間に着いた。『入学式』と書かれた看板が立て掛けられていた。
「ほら、着いたぞ」
振り向くと、少女は嬉しそうに笑みを浮かべていた。
「わ、本当だ!」
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