晴。

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シンプルに描くつもりだった。 プールサイドも、泳いでいる人も魚も描かず、ただ、水だけをイメージして描くつもりだった。 今から何かを付け足しても蛇足になるだけだと思うし、むしろ何も描かなければいいのか。 いやいや、何かを付け足したい。 水の存在を邪魔しない、何かを……。 そう思って別紙に鉛筆を走らせるのだが、全く思いつかない。 うぅん、と声をもらしながら何か良いアイデアはないかと脳内を探し回っても、何もでてきやしなかった。それどころか、ただ虚しい時間だけが流れる。 「何かないのかなあ」 葵は、頭をかく。 指先にまとわりつく髪がふわりと風に吹かれる。 ぽんっ、ぽんっとポップコーンが弾くようにアイデアが出てきたらどのように楽か。 葵は水の描かれるスケッチブックに顔を埋めた。 かすかに、絵の具の臭いが葵の鼻をくすぐる。 「何してる?」
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