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「もしもし」 「東?ごめん、起こしたか?」 「いや、起きてたから平気。どうした?」 額にかいた汗のせいで、前髪が濡れている。 携帯を持っていない逆の手で、くしゃっと髪を乱した。 「東、今日何コマから?」 「3コマ、社会心理学」 「あのさ、ちょっと早く来れねぇ?」 「何で?」 「ちょっと、相談したいことがあるんだよね」 俺は犬井のヘラヘラした顔を思い浮べた。 確かに会って普通に話すくらいだが、相談を受けるような間柄じゃない。それに、口を開けば合コン、女、クラブ、としか言わない犬井は苦手な部類だ。 2人きりじゃ会いたくない。
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