神々の街

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「私たち……帰れるよね」  グロウの唇から漏れる声は弱々しかった。  クリードはグロウの手にそっと手を当てて微笑んだ。 「大丈夫。きっと何とかなるよ」  クリードの声は限りなく優しく、グロウは不安が安らいでニッコリ笑った。  グジグジするのは私らしくないか……。  とにかく進み続けないと――! 「そうね。何とかなるわよね! じゃあ、とりあえず……ご飯にしましよう!」  ひょいとベンチから立ち上がったグロウはクリードの手をぎゅっと引っ張った。 「ハハ……そっちのほうがグロウらしいよ」  クリードはくっくっと笑いながら腰をあげた。  グロウは真夏のひまわりのような眩しい笑みを浮かべている。  見ているこっちまで元気にさせられる太陽のほほ笑みだ。  グロウとクリードは店を探すのを兼ねて、街中を散策することにした。 「でも、僕らってこの世界で使えるお金持ってないよね」  クリードは露店に並べられたアクセサリーや果物やら屋台の値札を見ながら困ったように呟いた。 「うっ……そういえばそうだったわね」  グロウも困った表情を浮かべたが、何か思いついたらしく輝く様な笑顔でこちらを振り向いた。 「ジークさんに会ってみない?」 「え?」 「もしかしたら力になってくれるかもしれないし、この世界について詳しい話だってきけるじゃない!」  確かに、情報は必要だ。  彼が力になってくれれば助かるし、この世界について知っておきたい。  クリードは数十秒ほど思案し、こくんと頷いた。  こういう前向きなところは時として心強い。  クリードは内心微笑した。 「決まりね! ……そういえばジークさんってどこにいるんだっけ?」  いきなり心配になってしまった。 「まったく……どこか抜けているんだから……聖堂って言ってたから、たぶん街の中心にあるあれだと思うよ」  クリードは街の中心――ひときわ高い尖塔を指差した。 「そっか、そっか。じゃあ、いきましょ!」  太陽の様な少女に手を引っ張られたクリードは、そのまま雑踏へと走っていった。
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