女神の試練

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 大騎士四人の議論が停滞した頃、グロウとクリードは、聖堂の左側にそびえる尖塔の前にいた。  正面の黒塗りの扉には金の蛇とフクロウにオリーブの細工が施されている。  高さは五メートルはある扉に二人は圧倒されていた。  石造りの時代の流れを思わせる尖塔は間近でみると、天にも届きそうである。 「それにしても大きな塔ねー」 「そうだね。何に使っているんだろう」  二人は塔を見上げながら感嘆の声を漏らした。 「ここで何をしておる?」  二人が塔の威容に感動していると背後から声をかけられた。 「きゃ!?」 「うわぁ!?」  グロウとクリードは飛び上がりそうになり、ゆっくりと後ろを振り向いた。  まったく気配がなかったから驚きも数倍だ。  ……あれ? 誰もいない。 「こっちじゃ」  下から声がして、視線をそちらに向けると、十歳ばかりの少女が立っていた。  すばらしく美しい少女だった。  幼く、天使のような可憐な顔立ちをしている。  吸い込まれそうな漆黒の瞳に、満月の様に輝く黄金の髪、肌は大理石のような白色をしている。  白い布キレの様な服をまとい、どことなく神秘的な雰囲気を放つ少女だ。  しかも、見た目に反して凄まじい存在感を放っている。 「ふむ。あなたたちはマイスの住人ではないな。奴と同じ異世界の波動を感じる」  じろりと観察するような視線を二人に向けながら少女は低く呟いた。 「な!?」 「え!?」  二人は初対面の少女の言葉に目を剥いた。  いったい彼女は何者なんだ?  目の前の不思議な少女は、クリードの警戒するような鋭い眼差しに対し、やさしげな笑みを浮かべていた。 「そう警戒せずともよい。女神たる妾は知恵の神でもあってな、その程度ならすぐにわかる」 「じゃあ、あなたが――」 「アテナ様!?」  聖堂の方から大声がし、驚いてそちらを振り向くと、ジークがこちらに早足でむかっていた。 「なぜ御身がここに? ここ数日、『紅の獅子』が何度も目通りを願っていたのですよ!?」  ジークは口調は丁寧だったが非難がましい視線を女神に向けていた。 「わかっておる。だがな、こちらも少し深刻な事態に陥っておってな。お前達については授ける策はあるから安心せい」  女神は尊大な微笑みをジークに向ける。
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