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「起きて……起きてよ……」
「うっ……く……?」
呼びかけられた声にクリードは目を開けた。
「よかったぁ。目が覚めて!」
泣きそうな顔のグロウが目に入った。
普段は明るく元気な彼女だが以外に涙脆かったりもする。
そういえば、なぜか頭の下だけがやわらかく、あたたかかった。
意識がだんだん鮮明になってくる。
ふと視線を横にしたクリードは真っ赤になって飛び起きた。
スカートからのびた白い膝が目に入ったからである。
「クリード!?」
「あ、わ、もう大丈夫だから!?」
クリードはアワアワしながら言った。
「そう? よかったぁ」
グロウは心底安堵した表情を浮かべている。
どうやら、本当に心配していたらしい。悪いことしたかな……。
嬉し恥ずかしいショックで意識が完全に覚醒したクリードは照れ臭いのか、頬をかきながら辺りを見た。
「ここは………?」
さっきいた森とは明らかに違う森だった。
赤い葉が木々を染め、年月の長さを感じさせる巨木が鬱蒼と生い茂っている。
自分達のいた森は葉が緑色だ。しかも、これほど太い木々などそうそう生えていなかったはず……。
「わからないわ。気付いたらここにいたもの……」 グロウも首を横に振り、視線を下に落とした。
どうやら、あの地震の後に何かが起きたらしい。
記憶の隅にひっかかる妙な感覚はなんだろう?
扉の様な気がするが、はっきりと思い出せない……。
とにかく、ここらへんの情報と場所を調べないと。
クリードは頭のなかでするべきことを整理して立ち上がった。
「とにかく、今は情報を集めよう。何が起きたかわかるかもしれないし」
「あ、そうだよね! 迷うより進めって言うものね! 今は迷うより進むべきよね!」
明るさを取り戻したグロウはスッと立ち上がって笑った。
こういう状況での彼女の明るさには癒されるものがある。
クリードは微笑してグロウの手を握った。
白い柔らかな、それでいて暖かい手を包んだ。
「そうだね。今は前に進もう!」
「おーっ!!」
グロウは元気な声をあげた。
二人は鮮やかな紅に包まれた森を歩きだした。
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