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「おーい、朝だぞ! おきろ!」
遠くから誰かが呼んでる……。
「おーい……朝だぞ!」
だんだん声がはっきり聞こえてくる……でももう少し寝ていたい。
グロウは布団にくるまったまま目を閉じていた。
「おーい! 朝だぞ!」
すぐ近くで声がする。
うるさいなぁ……。
グロウは眠たそうに目を開けると、突然、見慣れない男の顔が目に入ってきた。
一瞬の沈黙――。
「キャアー!!」
グロウは悲鳴を上げ、男の顔に思いっきり顔に張り手を食らわしてしまった。
「ぐぎゃ!?」
「グロウ!」
悲鳴を聞いてクリードが飛び込んできた。
何があったかを説明すると、げんなりとため息をついて、
「大声出すから……何かと思ったら……ただの勘違いか」
「だ、だって……いつもクリードが起こしてくれるのに、なんでジークさんが起こしにくるのよ!」
グロウは気まずそうに両手の人差し指をつっ突き合わせながら赤くなって俯く。
「この近くの地理についてジークさんに教えてもらってたんだよ……」
「朝からビンタはちょっとショックだったぞ」
ジークはグロウの手形のついた頬をさすっていた。
「すいません……」
グロウは赤くなったままゴニョゴニョと謝る。
「まぁ、気にするな。早く朝ご飯食べちまいな。すぐに出発だからな!」
ジークは豪快に笑いながらパタパタと手を振った。
やっぱりいい人だなぁ……クリードとグロウはジークの人の良さに感嘆した。
クリードが暖めた昨日のスープの残りと、パンの欠けらを胃に流し込んで、二人はジークとともに近くの街へと歩を進めた。
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