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だから、私立なんて贅沢を言えるほどの余裕はない。 「美音、何難しい顔してるの?」 「いや、別に」 ふふっと笑ってその場をごまかした相手。 私の今1番信用できる相手、 〝楠 麗香〟も私と同じような状況にあった。 麗香は、母と妹3人の五人暮らしで、生活保護で暮らしているらしい。 麗香とは3年生で同じクラスになってから仲良くなった。 話も合い、偶然にも行きたい高校が同じだった。 優柔不断な私にとって、麗香はお姉ちゃんのような存在でとても頼りになった。 「オープンハイスクールの申請書、書いた?」 麗香は申請書を顔の横でピラピラと揺らした。 「うん。書いたよ」 「それじゃあ先生に渡しに行こっ」 私たちは、教室のピリピリとした空気から逃げるように職員室へ向かった。  
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