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空が茜色に染まる。
それをぼーっと眺めていた山崎退は、ふと我に帰って再び歩き出した。
真選組・監察方──この肩書きを持っている山崎にとって、今日は久々の有給休暇だった。
日頃の疲れを癒すため屯所でゴロゴロしていようかと思っていたのだが、予想以上に天気が良かったので出掛けることにした。
バドミントンをして、『となりのペドロ』を見て、バドミントンをして。
充実した一日だったと山崎は思う。
「そろそろ帰るか……」
──早く帰らないと副長に怒られるし。
それは想像するだけで恐ろしかった。思わず身震いしながら、山崎は人気のない道を進んでいく。
十字路に差し掛かった時、右側から荒々しい物音が聞こえてきた。
監察の仕事が染み着いているからか自然と物陰に隠れる。そっと覗くと、暗闇から現れてきたのは──一人の少女の姿。
(誰かに追われてる……?)
苦しげながらに走る少女の後方には数人の気配があった。それには少なからず殺気が含まれていることにも、山崎は気付いていた。
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