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(助けた方がいい……よな)
今日は私服を着ていて良かったと山崎はつくづく思った。これなら一般人に扮することが出来る。
少女が転んだのを機に、通りすがりの人の振りをして山崎は駆け寄った。
「──だ、大丈夫ですか!?」
少女に近づいたのと同時に気配の動きが止まった。一般人に手を出すような野蛮な輩ではないらしい。
山崎は少女を運ぼうと手を伸ばすと、少女が抱き抱えていたものを差し出してきた。
「え」
「……これ、を……」
子犬だった。
少女とは反対に、安らかに寝息をたてていた。
「……わ、たしのことは……いい……から」
「そんな……っ」
気配が再び少しずつ動き始めている。決めなければならない。
──狙いはどっちだ?
少女か、それとも──
「──こっちかっ!?」
受け取った子犬を頭の上に掲げる。瞬間、子犬に向かって放たれた手裏剣に素早く反応し、子犬を再び抱き止めた。
続いて迫ってきた人影が小刀を片手に山崎に斬りかかる。それを難なく交わし、相手の脇腹に蹴りを入れてから少女を担いで走った。
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