等しい代償

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ある町工場… 夜も煌々と明かりをつけ 忙しそうに働く人々 騒音を放ちながら モノを作りつづけている 「ねぇ…それを作ることに何の意味があるの?」 女の子が聞いてきた。 「そこの人達は皆の暮らしを豊かにしたいと言っていたよ」 僕はそう答えた。 「皆の暮らしっていうのは何なの?例えば僕たちが豊かになるの?」 男の子が聞いた。 「そうだね。それはとても難しい質問だね。誰かが豊かになればそれと対象的に何かが失われるものだからね」 僕は少し困りながら答えた。 「等価交換ってやつだね」 少し背の高い男の子が自慢げに言った。 「そう、この世は全て等価交換なんだよ。例えば誰かが林檎を食べたとすればその林檎は失われるようにね。何かを手に入れるためには何かを失わなければならない…そういうことだよ」 僕は悲しい顔をしながら言った。 「じゃあ、お兄さんの歌を聞くと何が失われるの?」 女の子が聞いた。 「僕の歌は世界の歌だから色んな情報も入ってる。だから君達は僕の歌を聞く時間と純粋さを失うのだと思うよ」 明るい笑みを浮かべ僕は答えた。 「時間はわかるけど…純粋はなんで?」 少し背の高い男の子が聞いた。 「知識をつけるということは悪いことではないよ。でもそれと同時に情報をもとに考えてしまい一つ純粋な考えというものが失われるのだと思う」 悲しげに僕は言った。 「へぇ~~」 声を合わして子供の皆が言った。 夜中の木の下で歌を歌う僕の周りにいる子供は皆機械仕掛けのロボット この詩の工場で作られた不良品 ゴミ処理場のような場所で今日もロボットが捨てられ 明日には動かなくなるのだろう。 不良品とは人間が決めた規定だが強いて言えば人間も不良品だ。いつの日かこの代償を払う日がくるのだろう それまでは きっと悲しき製造を繰り返す いつまでも…
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