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璃乃は帝への部屋に行き美沙姫様に言った通りのことをそのまま伝えた。
「そうか…美沙にはもう心に決めた者が居たのか…。」
帝は暗い顔をし、言った。
「どうなさるの?姫様以外跡継ぎは居ないのでしょう?」
璃乃はまるで他人事のように帝に告げた。
「だが…美沙には無理をさせたくはない。昔から我慢ばかりさせてしまったからな。」
跡継ぎは側近から養子をとることにしよう。
帝はそう締め括り押し黙った。
「あら、一国を治める長がそんな事でよろしいのかしら?」
皮肉をこめて璃乃は言った。
一体どちらの味方なのか、何とも天の邪鬼な性格である。
「致し方あるまい。それに能力のあるものを選抜し、跡継ぎとした方が国もより良いものとなるだろう。」
何も嫌がるものにやらせることはない、美砂には縁談は全て断っておくと伝えておくれ。
帝はそう言って、これから会議があると璃乃を部屋から出した。
帝の態度に釈然としないものを感じながらも、用は済んだと璃乃は美沙姫様の部屋へと帰っていった。
その夜。
-…憎い…あやつが憎い…妾の…を…なぜ……如きにッ…!-
額に玉のような汗を浮かべて璃乃は跳ね起きた。
「…なっ…何だ今のはっ…」
まだ心臓が波打っている。
それにしてもさっきの夢は…。
どこかで聞いたことのある…声だった。
「どうなさったの、璃乃?悪い夢でも見ましたか?」
隣から美沙姫様が声をかけた。
「いいえ。大丈夫よ姫様。」
「そうかしら?とても汗をかいているみたいだけれど…」
そう言いながら美沙姫様は手拭いで璃乃の額に浮かぶ汗を拭います。
「大丈夫。私は人より頑丈なのよ?」
璃乃はそう言って、
さぁ、もう寝ましょう。明日も早いんだから
と素早く自分の寝床へと戻りました。
美沙姫様は暫く心配そうに璃乃を見つめていましたが、軽く息を吐いて布団へ戻りました。
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