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「…フフッ…あぁ可笑しいこと。何も知らずに居たとは。」
「…お黙りなさい。あなたはどなたですの、璃乃ではないのでしょう?あの子はその様な笑い方は致しませんわ。」
暫くは混乱していた美沙姫様でしたが、すぐに視線を真っ直ぐに璃乃へと向き直りました。
「…その通りだ。美沙、あいつはお前が知っているモノではない。」
青年…紅雅は静かに言いました。
「あそこに居るのは俺達、異形のモノの長。桜鬼・瑠璃だ。瑠璃は魂の一部を使って美沙を呪っていたんだ。」
俺を手に入れるために。
悲しい眼をして紅雅は璃乃を見ました。
「…そう…でしたの…。」
美沙姫様は全てを悟りました。
「俺は禁忌とされる人間との婚姻を認めて貰おうと瑠璃の元へ行ったのだが、瑠璃は逆上し、俺は封印されてしまった…。だが漸く封印を解いて美沙の元へ来た。だが…俺は力を使い果たしてしまったようだ。」
そう言った紅雅の体は淡い光に包まれ少しずつ消えていきます。
「紅雅様ッ!私は!!私は例えあなたが異形の鬼だとしてもお慕い申し上げております!」
私も共に連れて行って下さいまし!
美沙姫様はそう言って紅雅のもとへ駆け寄ります。
「そうはいかせるものか!!お前は妾の手で死よりも屈辱的な目に合わせてやるのじゃ!!」
璃乃はものすごい形相をして美沙姫様の前に立ちふさがります。
今にも美沙姫様に瑠璃の魔の手が襲いかかりそうになったその時。
「…グッ…姫様ッ早く紅雅のもとへお行き!!」
突然瑠璃は苦しげな表情を浮かべ、璃乃の人格が出てきました。
「璃乃ちゃんッ!」
美沙姫様は璃乃が心配で仕方がないようすです。
「良いのよ姫様!あたしのことは心配しないで!!あなたが思っているほど私は弱くないわ。」
ニコリと美沙姫様に笑いかけ、璃乃は言います。
「…ごめんなさい…あなたを置いて私は…お父様にも悲しい思いをさせてしまう…だけど…駄目なの…私は紅雅様が居ないと生きていけないの…ごめんなさい…」
美沙姫様は涙を零しながら璃乃に謝ります。
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