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夜明けが近づいた頃璃乃は漸くお屋敷へ戻りました。
そして、真っ直ぐに帝の部屋へと向かったのです。
「帝。璃乃です。報告したいことがあるの。」
そう言って返事も待たずに襖を開きました。
「…璃乃か…?そなた人間になったのか…?」
「えぇ…姫様のおかげよ。」
「そうか…通りで美沙にそっくりな訳だな。して、美沙はどうした?」
「…姫様は…もう…」
帝に全てを話しました。
それがどんなに彼を苦しめることになったとしても。
璃乃は正直に話しました。
姫様の最期を伝えるために。
「姫様は…先に逝ってごめんなさい、そしてありがとうって言っていたわ。とても幸せだったとも。」
「そうか…幸せだったか…良かった…」
帝は涙を流し、とても悲しみました。
「…悲しんでいる時に悪いんですけど、まだ話があるの。」
涙を拭い、帝は顔を上げました。
「…話…とは?」
「あたしが姫様の代わりにこの国を治めるわ。姫様の愛した風景を守りたいの。」
「自分が何を言っているのか分かっているのか?一国を背負うというのはお主が考えているほど楽ではないのだぞ?」
「そんなこと百も承知よ。もちろん帝にも執政は手伝って頂きたいのだけど。あたしは教育はしっかり受けているから必ずしも不可能というわけではないでしょう?」
…しかし…、だが…と言い募る帝を無視して
「とにかくあたしはやるわよ!どうせまだ跡継ぎは決まってないんでしょう?ならばあたしがやるわ。」
あまりに強気に璃乃が言い切るので帝はとうとう折れて
「そんなに言うのならば璃乃を正式に跡継ぎとして認めよう。だが、女のみで上に立つのは無理だ。しっかり良い婿を迎え入れるのだぞ?」
「覚悟の上よ。あたしはもうどんなものにも負けないわ。」
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