物の怪

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昔昔、遠い昔のおはなしだよ。 その昔とある小さな村に霊験あらたかな僧侶が居ったそうな。 その僧侶の生き甲斐は仏様を彫ること。 毎夜毎夜修行を終えた後に彫っていたそうだよ。 その頃、都には美沙姫様というたいそう綺麗なお姫様が居り、病に伏せって居りました。 時の帝は娘を目に入れても痛くないと言うほど可愛がり、病をどうにか直せないだろうかとあの手この手を使って治療法を探しておりました。 しかし、どんなに力の強い、徳の高い僧侶や陰陽師、薬師に頼んでも一向に体調は良くなりません。 そこで帝は風の噂に聞いた霊験あらたかな彼の僧侶に「どうにかならないだろうか」と相談しに行きました。 僧侶はすぐさま美沙姫様の居る宮廷へと駆けつけました。 ところが、美沙姫様のご様子を見た途端、僧侶は悲しそうな顔をし、帝にこう告げたのです。 「帝様。姫様はもう大分弱られております。今のこの状態ではこの先の回復は臨めないでしょう。…この物の怪が出て行かない限り。」 帝はその話を聞き、物の怪が憑いたなど初耳だとたいそうおどろきました。 そして物の怪を追い出す方法はないのか、と僧侶に詰め寄りました。 「一つだけ。あるにはあります。ですが、この方法は必ずしも成功するとは限りません。」 帝はそれでも良いと、美沙が助かるならと僧侶に物の怪を追い出すように頼みました。
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