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「あら、あなたはお喋りが出来るのね」
呑気な美沙姫様はのほほんと微笑んでいます。
「…美沙…そんな問題ではないのだが…」
帝は腰に提げた刀に手をかけ、臨戦態勢をとりました。
「あらまぁ失礼しちゃう!!別に姫様に危害を加えようって訳じゃないのよ?」
「何を言うか!お前はつい先日まで我が娘に取り憑いていたではないか!!」
警戒心を解かぬまま帝は人形へと怒鳴りました。
「そんな事もあったかしら?全然覚えが無いわ。」
キョトンとした表情を浮かべ、人形は言いました。
「どういうことだ?」
未だ険しい表情を崩さぬまま帝が聞きます。
「ぼんやりと姫様に取り憑いていたのは覚えているわ。でも今の私は負の感情も正の感情も持っていないの。」
ニコニコと笑いながら言う人形はまるで幼子のようで、何か有らば斬り捨てようと物騒なことを考えていた帝は毒気を抜かれてしまいました。
「まぁまぁ…それは赤子同然ですわ。まだ善と悪の区別が分かりませんのね…」
これでは私が守られると言うよりは、教育を施し、守ってあげなければいけませんわ。
そう言って美沙姫様は膝元に立っていた人形を抱き上げ、
「まずは名前が必要ですわね。あなた、自分の御名前分かる??」
美沙姫様がそう聞くと、人形は自分の名前くらい言えるわ!と憤慨したように叫びました。
「私の名前は璃乃ーリノーって言うのよ!!」
「璃乃ちゃん?可愛らしい御名前ね。それでは璃乃ちゃん明日から早速お勉強致しましょうね。」
美沙姫様は優しく微笑みかけ、翌日から読み書きから短歌からみっちりと教育が始まりました。
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