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「残念ながら、ここに目的の物は入っていなかった」
冷酷そうな男は立ち上がりながら、特に残念そうでもなくそう言い放つと、彼がそれまで触れていた黒い金庫の天井をトントンと軽く叩いた。
「おいおい、どういう事だ、もしかしてあの野郎、俺たちに嘘を教えやがったのか?」
筋肉質の男は左手に持つ懐中電灯を点けると、金庫の前に立つ男を照らした。
突然の光にまぶしそうにしながら、眼鏡の男は唇の端を持ち上げ、薄く笑った。しかし、眼鏡の奥にある瞳が映すのはただの笑いではなく、純粋な期待感だった。その証拠に眼鏡の男は、
「この仕事、なかなか楽しくなりそうだ」と、小さく呟いたのだから。
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