2020年10月2日-アノ日ノ傍観者-

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リビングの戸を開けると、イスに座っていた制服姿の少女が立ち上がり、優しさに満ちた笑顔で俺に挨拶する。 俺の妹───唯だ。 「おはよう。身体の調子は大丈夫か?」 唯は喘息が酷く、その為ここ2ヶ月程外出を病院の方から禁じられていて、ずっと家で休養している。 「院長が大袈裟なだけだよ。それに11月からは状態次第で外出ていいって」 「後1ヶ月か。早く学校行けるといいな」 「うん」 なにげない日常の会話が、2人しか居ない少し寂しいリビングをほんのり温める。 俺と唯の両親は訳あって今は海外で仕事をしている。 小学生の頃は良く伯父さんが来てくれたが、俺が中学生になった時、事故で亡くなってしまったのだ。 「今日はトーストでいい?」 「うん。お願い」 注文を受け取った俺はブレザーを椅子に掛けるとそのまま奥にあるダイニングキッチンに向かい、支度を始める。 流石に喘息持ちの妹に無理させる訳にはいかないからだ。
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