始まりの手紙

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ーオーストラリア 某所ー 監守「おい!62番!用意しろ。」 獄内の小さな小窓から僅かに漏れる光が朝を知らせるのとほぼ同時に、 監守の耳障りな太い声が響き渡った。 ジョン「あぁ?なんのだよ?朝っぱらから… 犯罪者引きつれて遠足でも行くのかぁ?」 ジョンは、 ふざけた表情で軽く監守を挑発した。 監守「私語は謹め! 例の事件の被害女性が弁明し、 お前の罪を軽くしてくれたそうだ。 …出所だ! 支度をしろ。 いい加減な態度をとってると、 また檻ん中にたたき込むぞっ!」 監守は、 若干の苛立ちを無理矢理押さえつけながら再びジョンをどなりつけた。 ジョン「そっか…。 まぁー丁度飽きてきたし…出っか!」 ジョンは、ゆっくりと腰をあげ、 囚人服に付いた埃を手でゆっくりと払いながら再び監守に挑発の表情を向けた。 監守「いちいち癇に障る奴だっ!! 早くしろっっ!」 意地とプライド、そして監守としての地位が、声色を一層激しいものにした。 ジョン「あいあーーい。」 監守の明らかに憤怒を含んだ声にも一切ひるむことなく、 面倒臭そうに軽く手をあげて返事をした。 外の気温とは全く異なり、ひんやりとした、 静寂極まる刑務所内を、 敵視の目を一挙に浴びながらぐるぐると回り、 大きな門の前に辿り着いた。 監守「お前みたいな面倒くさい受刑者はもう御免だ。 これからは、悪さすんじゃねぇぞ!?」 ジョンは全く耳をかさず、とりあえず 「あいあーーい」 と返事をして、 短い時間ではあったが、世話になった刑務所を後にした。
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