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ーオーストラリア 某所ー 屈強な筋肉を身にまとった男は拳を振りかざし、 彼より一回りは大きいであろう大男を薙ぎ倒していた。 その右肩には、意識せずとも目に入ってしまう、弾痕が痛々しくも過剰に何かを主張をしていた。 屈強な筋肉を身にまとった男「この刑務所にはろくな奴がいねぇな。 いつでも誰でもかかってこい。暇つぶしに相手になるぜ。」 そう言って辺りを見渡し、勝ち誇ったような顔をして、 刑務所内の広場にポツンと立つ大木の木陰に腰を下ろした。 「…今シャバじゃー大変なことになってるみてぇだな。」 空を見上げながらゆっくりと右から左へと流れる雲を羨ましそうに眺めた。 彼の名はジョン。 先日刑務所に入れられた。 その罪は傷害罪… 通りがかりに、 男性に襲われていた女性を救うために、 相手を殴り倒したのであったが、 その風貌と口の悪さが災いして入所した… というわけであった。 その強靱な肉体はボクシング…というよりは日々のストリートファイトで培われ、 ある街では「奴を見かけたら絶対に目を合わすな。」 とまで言われていた。 しかし、実際は正義感が人一倍強く、 ただ人一倍不器用なだけであった。 ジョン「刑務所ならちっとは楽しめるかと思ったんだけどなぁ。 とりあえず刑務所が飽きたら適当に脱獄でもして次の遊びでも考えっか。」 鳥が囀り、涼しげに吹く風が枝を揺らす… 刑務所ではあるが、そこにはあまりにのどかな空間が形成されていた。 その空間を肌で感じるように天を仰ぎ、 限りある自由時間を満喫すべく、 太い腕に頭を乗せ、瞳を閉じた。
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