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ーアメリカ 某所ー
数多の人間の波が行き交う賑やかな大通りの街灯がポツポツと灯り始め…
それまでとはまた一風異なった雰囲気を醸し出した街…
そこに、
美しい金色の髪をなびかせ、
明らかに常人とは一線を画すオーラを身に纏う一人の女が居た。
周囲の目を釘付けにしながら街を闊歩する女は、
何かを隠すように美しく咲き誇る[バラ]のタトゥーが刻まれた左腕を上手に折畳み、
携帯電話を耳にあて、何やら怒りの表情を浮かべていた。
金髪の女「なに?またあんた?
もうあんたにはうんざりだって言ってるでしょ!お金がないのに私とデートできると思わないで!!」
そう言って一方的に電話を切った。
数秒後にまた携帯が鳴りだし、
着信を伝える光に彼女は再び怒りの表情を浮かべ、
少しも躊躇することなく携帯を排水溝へ投げ入れた。
ボチャン…
という音を確認することなく、
女は振り返り、
周囲の目など全く気にすることなく、再び気品を漂わせながら街を歩きはじめた。
彼女の名はエリザベス。
その美貌から、
年がら年中男に付きまとわれているが、それを逆にうまく利用することによって、
煌びやかな装飾を身に纏い、
豪勢な生活を送っていた。
エリザベス「ほんとこの世の男はクズばっかり。
世界がこんな状況だから、お金もなかなか出してくれないし。
私にはお金が必要なの。それもたっっくさん!!
絶対に…
人を騙してでも…」
心のなかに深く根差す彼女の強い感情が一瞬姿を現わした……
…が、
コロリと表情を変え、
エリザベス「はぁ~…それにしても一度でいいから本気の恋愛ってものをしてみたいわぁ。」
一瞬少女のようなあどけない表情を浮かべた。
しかし、そう言ったのも束の間、
鞄の中に入っているおびただしい量の携帯の1つが鳴りだし、
エリザベスは、音を放っている1つの携帯を探り出し、
通話ボタンを押した。
エリザベス「うん…、
きゃ~!ほんと?
あれすごく欲しかったのよ!」
電話の声に興味を示し、
[キャッキャ]と黄色い声をあげながら、
まだ太陽が沈みきっていないにも関わらず、四方の巨大なコンクリートの塊が光を遮り…
人工の光が照らす賑やかな街へと消えていった。
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