○最終章 池袋のパスタ屋

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 おまけに建の方はと言えばあたしと同じ部署の女や社内にバイトで来ている社員の親戚の短大生に手を出そうとしているとの情報。  その短大生の女の子はまだ、建みたいなギラギラした男に対する免疫を持っていないようなピュアなお嬢さんだとか。 …こん畜生、と無性に腹が立った。でも考えてみると会社にはもう他にまともな独身男もいなさそうなので、こちらもさっさと会社を辞めることにした。あてつけに川口という男と同じ日に退職するつもりで妹尾課長に強く言ったのだが、引き継ぎの事情もあって結局その男の退職日の四日後に辞めることになった。 …でもね…、とあたしは考える。  いろんな男に出会っていろんな恋をする。それが人生というものじゃないかしら…。最悪、お見合いで結婚する羽目になるかも知れないけど、そうなる前にまだチャンスはあると思う。  唯華がしみじみと考えている間に店内は正午を過ぎ、近くで働くOLや学校帰りの女子高生たちでほぼ満席になっていた。窓を見ると気のせいか先ほどよりもいっそう激しくなった雨が容赦なく窓に吹き付けていた。 (完)
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