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「――ハナちゃん?」
園木さんの声にはっとして、あたしは顔を上げた。目の前に園木さんがいる。園木さんの家で、机に勉強道具を広げて――。
そこでようやくはっきり目が覚めた。いつものように園木さんに勉強を見てもらいに来たのに、どうやらあたしは寝ていたらしい。あたしは慌てて頭を下げた。
「ごめんなさい! 寝ようとしたわけじゃないんだけど!」
「大丈夫ですよ。ハナちゃんもお疲れなんですね。テストも近いですし」
「ふむー、でも、何よりこたつ効果だよう」
あたしはシャーペンを置いて、腕まで布団につっこんだ。あったかい、というよりは心地良いって感じ。園木さんはふふふと笑った。まだ11月の始めだけど、園木さん家の机にはもうこたつ布団が挟まっていた。体の弱い園木さんのためだ。
「電気入れてないのにほっこりするね。うちはまだまだ遠いからなー、こたつ」
「そうでしょうねえ。今日はすっかり肌寒いのでずっとこたつに居ましたよ。ああ、何かお菓子でも食べますか?」
「……いい。まだ」
先に勉強ですね、と、園木さんはまた微笑んだ。きっぱり拒否しないあたりハナちゃんらしいなあ。うるさい。そんなことを言いながら、あたしはまたペンを持つ。
そこで、お茶をすすろうとした園木さんが、ふとあたしを見た。
「そういえば、あの日も丁度こたつを出した日でした」
「え? ――ああ」
あたしが拾われた日ね。
あたしが言うと、園木さんは優しい目をして頷いた。
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