2人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ
立ち尽くしてるあたしを不安げに見やってから、アルはそろそろと腕をエドに伸ばした。
けれど、その指先が兄貴のしっとりと湿った金髪を掠める前に、ハッとした様に腕を引っ込めてしまう。
その様子を目にして、あたしは我に返った。そうだ、ここで立ち竦んでる場合じゃない。
「アル、松葉杖を持ってくれない? エドはあたしが抱えてくから」
「えっ……あ、うん」
大きな鎧の身体が転がった松葉杖に駆け寄るのを確認しながら、あたしはエドの左腕を肩に回して立ち上がる。
小さな身体がぶら下げた鋼の右腕が、やけに重そうに見えた。
その日の夜からだった気がする。あたしとエドの怒鳴り合いが始まったのは。
理由はハッキリしてる。あたしが、エドに見張り無しでのリハビリを断固禁止したからだった。
最初のコメントを投稿しよう!