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春田さん以外の全員が一斉に例の家の方を振り向いた。
――誰も居ない。
いや、居るのか……?暗くてよく見えない。
『どうか誰も居ないでくれ』という思いから、無意識に『見えていないフリ』をしているだけなのかも知れない。
「誰も居ねぇじゃねえかっ!」
永井が春田さんの胸ぐらを掴んだ。
「フッ……『誰かさんみたいにビビってる』って、一体誰が今一番ビビってるのかしらね?」
春田さんは永井から目を反らさず、口角を上げて言った。
笑っている筈なのに、目は冷たく、笑っていない。
「ハイハイ、永井君。女の子に手ーあげないのー」
一貴は、春田さんと永井を引き離した。
永井はチッと舌打ちをし
「このガリ勉女が居たらシラケるっつーの。俺帰るわ」
と、例の家に背を向け、歩き出した。
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