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雲一つ無いコバルトブルーの空の下、新緑が生き生きと芽吹いている。
空にはワシだろうか。美しい弧を描きながら、広い翼の茶色がゆっくりと飛んでいる。
俺の座る崖の上には、柔らかな草が一面に生い茂り、白く小さな花を咲かせる。
その上を、寒々した風がさぁっと走り、空の端に黒い雲がもうもうと湧いてきた。まるで心を見透かされているように。
俺が救った世界。
数ヶ月前、やっと悪の大王とか言うヤツを倒して、世界は劇的に平和になった。
盗賊や魔物が居なくなって、商人が街から街へ自由に者を売り、若者は違う部族との恋に花を咲かせる。
税として必要以上に取られることのなくなった作物は、世界を同じ様に照らしてくれる太陽に育てられてすくすくと育つ。
太陽。そう、ずっと太陽も奪われていた。1ヶ月のうち10日しか大地を照らさなかった。
全てはあの悪の…地の底からやってきたずる賢い大王が、自分の住み良いように世界を作り替えようとしたせいだ。
俺はそんな世界を救うため、命を賭けて戦った。
俺はため息をつく。
…しかし、救われた世界は俺には冷たかった。
俺は犯罪者として国からも故郷からも追放され、ここで、この人のいない広い場所で生きることを強いられたのだ。
ぐるぐると考えるうち、いつの間にか小さな伝書バトがやってきて、俺の肩にとまった。こいつはハヤブサ。鳩のくせにな。よく働いてくれた、俺の相棒で、戦友だ。
手紙を運ぶことのなくなった相棒は、暖かな肩の上でうずくまった。
まぁ、こいつには今の方が伸び伸びとしていいかもな。
雨が降り始める前に、薪を割ってしまわなければ。俺は崖の上の木で出来た小屋に向かって歩き出した。
肩の伝書バトはちょっとだけ顔をあげて小さく、ポ、と呟くと、また丸くなった。
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