第二段落【突】

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ふと地獄が気になって、お釈迦様は池を覗く。すると、罪人のカンダタという男に目が行ったらしく、地獄から蜘蛛の糸を使って彼を助けようとする。ここで私は、読み進める目を止めた。カンダタはいくつもの悪事を働いたので、地獄にいる。それを助けてしまっては、償いにならないではないかと思ったのだ。大きな悪事より一つだけの善事をそんなに重要視してしまっていいのかと、お釈迦様に渇を入れたくなってしまった。いくら心の広いお釈迦様でも、それは甘過ぎやしないかと思ったのである。さらに、蜘蛛の糸で助けるとは、神様の考えというのは分からない。蜘蛛を助けたカンダタを、わざわざ蜘蛛の糸で助ける必要はないのではないか。せめて、刺繍糸くらいの太さは欲しいところだ。だが結果として、不思議と耐久性のある糸をたぐり、カンダタは登り始める。彼も、よく自分が助かると思い上がれたものだ。少しは生きていた頃の罪悪感、また糸に対する警戒心を持ってほしい。しかし、彼のいるところはむせるほどの血の池、つまり地獄なので、平常心を保つどころか冷静な考えはできなかったのだろうか。
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