第二段落【突】

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やがて、地獄にいる他の罪人たちが蜘蛛の糸に気づき、カンダタの後を追うように糸を上り始める。カンダタはそれに気づき、自分一人だけでも切れそうな糸を何百人、何千人の人間が上ってきてしまったら糸は切れてしまうと焦るのだが、そもそも一人でも上れてしまっていることに驚きはないのだろうか。無我夢中で上っていたにせよ、他の人が上れないように糸を回収しながら上るという方法などは、浮かばなかったのであろうか。極楽に行ける喜びに、目が眩んだとしか言いようがない。数々の悪事を働いたその頭脳で、最初から自分だけが助かるという姑息な手段を考えていたら、もしかすると極楽へ行けて助かったかもしれない。
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