第三段落【疑】

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私がこの作品で感じたのは、人間の無慈悲な心である。それはカンダタの思考や行動からももちろんだが、このお釈迦様も無慈悲だと思うのだ。私には、お釈迦様は暇つぶしに罪人を試してみたとしか捉えられない。確かに、カンダタを助けようとしたが失敗に終わり、そしてそれは彼自身のせいである。しかし、だからといってもう一度チャンスを与えるでもなく、他の罪人に目を向けることもなく、ただ哀れんだ目で池を見据えていただけというのが私は許せない。「仏の顔も三度まで」というが、ならばこのお釈迦様はどうなのだろうか。また、蜘蛛の糸なんかで助けるという行為も、助ける気などはじめから無かったのではないかと疑ってしまう。極楽まで上っていかなければならないというのも助かるための試練なのだろうが、人生を捨てたような男が根気強く上りきることができることなど、できはしないだろう。
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