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石田明、俺のたった一人の相方。
むっちゃ細くて、背が高くて、顔が小さくて。
俺が世界で一番大好きな人。
「石田」
楽屋で話かける。
「何?」
石田は先ほどからルーズリーフにペンを走らせている。
ネタでも考えているのだろうか。
「最近、ちゃんと食べてるん?」
そう聞くと、うん、と軽く返された。
嘘つけ。
少し痩せてきてるやん。
こいつの悪い癖。
誰も頼らんと、一人で抱えこむ。
俺は、こいつの相方やのに。
いつか俺はこいつに捨てんといて、とすがった。
俺はこいつを頼ってるのに、
頼るのも、心配かけるのも、怒らせるのも…好きなのも。
全部、全部俺から。
こいつかて、決して俺を嫌いなわけやない。
長年一緒におったら、そんくらい分かる。
けど、こいつはたまに何考えてんのか分からんときがある。
そんときは、自分が情けなくて、悔しくて寂しい。
「石田」
パソコンをやり始めた相方の背中に、再び声をかける。
「ん?」
ほら、
俺の方は一切向かん。
こいつにとって俺は、ただの相方。
「…こっち向けや」
自分で言うて悲しなるって、もう終わってるやん、自分。
石田がやっとこちらを向いてくれた。
「どないしたん?」
優しい声で話かけるから、胸が煩くなった。
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