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「おい!!聴こえないのか!!船を戻してくれ!!お願いだ・・・あんなところで死にたくない・・・」
虚しくも男は、ついにコックピットの前で泣き崩れた。
大気圏突入の際の衝撃は凄まじい。罪人用の安全ベルトは頼りなさそうな物だが
体を固定しないと一たまりもないのは明らかだ。
「おい!早く戻れ!!戻ってベルトをしろ!!」
クラウドがモニター前の男にそう言い放った直後だった。
凄まじい衝撃がポッドを揺らし始める。
「くっ!!」
安全ベルトがひきちぎれんばかりのミシミシと嫌な悲鳴をあげる。
座席と船体の隙間にしがみついてやっと体が止まる。
対面する座席の前の通路を物凄いスピードで何かが横切ったかと思うと
同時に体のフレームが砕けるにごった音がポッドを大気がこする音に混じり微かに聴こえた。
(何故、彼はあれ程地球に対して過敏に反応したのか・・・全ては地球に降りれば解ること・・・か)
衝撃が少しずつゆるやかになってきた。
着陸するため減速しているのだろう・・・。
しばらくするとポッドが一切動かなくなり、後方の扉が開く。
男だった肉塊がゴロンと傾斜のあるスロープから転がり落ちた。
安全ベルトを外し、立ち上がるとコックピットからあの機械的な女性の声が聴こえた。
《3分以内にポッド内から脱出して下さい。5分後にポッドを半径1km程の規模で爆破致します。繰り返します・・》
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