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ここはとある世界──魔法や魔物が存在する、一つの世界である。
今からさかのぼること二千年と少し前、人々は魔法と呼ばれるものを作り出した。太古から使われてきた魔力という身体に宿る強大な力を、想像することによって操り、言葉を用いて具現化させたのだ。
それは非常に便利で、しかしその反面、非常に危険なものでもあった。
人々は魔法を使うことによって、豊かな生活をしてきた。だが、それを悪事に使うものが現れ出したのだ。──そう、人々は、魔法を戦に使い始めたのである。
飛び交う火の粉、凍傷で壊死する手足。原型を止めぬほどに身体を切り裂かれ、或いは天から落とされた雷に身を打たれ、また別の者は地面に生き埋めにされ────醜い争いで多くの者が命を落とし、また多くの者が大切な人を亡くした。
無数にあった国は、五つの国に併合された。
一番大きな中央の国は、宗教国である北の国と仲が悪く、今でも戦争が絶えない。
常夏の国と呼ばれし商業国である南の国は、魔導機が発達した西の国と仲が悪い。
長年鎖国をしていた東の国は、東の国を侵略しようとしている北の国を嫌っている。
それぞれ価値観の異なる五つの国は、互いに反発しあっているのである。しかし、交流がないわけではなかった。
年に数回、仲が良い国から国へ連絡を取るようにして、五国の代表が集まり、交流会を行うのである。その時だけは、争いを忘れ、いがみ合うこともせず、話し合う──争いがありながらも、平和な世界なのだ。
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