第二章 ニアン学園とガイアの友人たち

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   サキカは躊躇しながらも左手を差し出し、笑顔で握手を交わした。ラウの掌の皮膚は固く、ごつごつとしている。それは、両手剣でも使用しているのか、はたまた盾を握っているせいなのか。何にせよ、彼が戦に生きる者であったことは、明白である。 「改めて自己紹介を致します。総帝“白銀の刀使い”、サキカと申します。……名字はありませんので、必要でしたら適当に考えますが」 「そうだね。……名字がないと目立つかもしれない。適当に考えてくれるかい?」  ラウは手を離しながらサキカに頼んできた。──名字がない理由を詮索されなかった。名字がないということは、親がいないことを意味している。理由が詮索されなかったのは、学園には名字無しが多くいるからかもしれない。 「では……フォーラスとでもしておきます」 「分かった」  適当に頭の中に浮かんだ名字を告げると、ラウは机にあった紙にフォーラスと書き留めた。それを書き終えると、彼はガイアに目を遣った。 「礼を言ってなかったね。サキカ君の案内、ご苦労様」 「……いえ」 いつもの仏頂面で短く答えるガイア。サキカはふとあることに気がつき、ラウに問うた。 「学園長先生、俺の制服や教科書はどうしたらいいのですか?」  サキカは今、私服姿だ。ステラからはこちらで渡されると聞いていたのだが。 「ああ、それならここに」  ラウは机上にあった制服と教科書類を指差す。小さな山をなしているのは、科目数が多いせいなのだろうか。 .
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