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「天使のユリを返してよ! それがないと、弟が死んじゃうの!!」
彼女は魔人にユリを奪われたのだ。
魔人が手に握るあのユリは天使のユリと呼ばれており、様々な魔法薬の材料としてよく知られている。
少女も魔法薬を作るのに使うつもりだった。病に侵され、日々苦しむ弟のために、商人や旅して暮らす冒険者に訊ね、どうにかユリの存在を知ったのだ。
買うには高価で手が出ずとも、自生しているのを摘めばよいのだ。幸いにも少女の住む村の近くの森に自生しているということを知って、森に入った少女は、帰り道に運悪く魔人と出会ってしまったのである。
「返せと言われて返す馬鹿がいると思うか?」
魔人はニヤニヤと笑い、少女を見下(みおろ)してきた。そのうちからかうのに飽きてきたのか、魔人らは少女に向かって魔法を放ち、痛め付けて遊び始めた。
「っ────!」
身体に激痛が走る。自らの身体から流れ出た赤い液体が、新緑の草を黒く染め上げ、鉄の臭いが辺りに充満した。
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