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自分達の名を語って
予告状を出した男。
「ロワイヤル」の名を騙る者を
ラウールは許さない。
正体を暴こうと
予告状の時間に忍び込んだ屋敷で
彼はフリッツP38と
その銃弾がじいやの胸に
撃ち込まれるのを
目の当たりにしたのだった。
撃った相手はすぐにわかった。
ラウールは静かな怒りと共に
男の元に乗り込むことを決めた。
ついでに男が
たんまり溜め込んでいる
お宝もいただいちまおうと
ロナルドやレイナを
巻き込んでみたまではいいのだが
そちらの方は今回は
完全にロナルド達に
まかせてしまっている。
ラウールは肩をすくめて
いつもの調子を取り戻そうと
声を発した。
ラウール:
ま、そっちはお前らに任せるわ。
俺がいなくても
なんとかなるだろぉ?
こっちの方が手強そうでな…
もう少し時間がかかりそうだ。
ロナルドが微かに
肩をすくめるような仕草をした。
怒っているのでも
いぶかしんでいるのでも
ないことは
穏やかな気配でわかる。
言葉や表情はなくとも
隣に立つ男の感情は
たいていの場合
気配で感じ取ることができた。
…相棒か。
ラウールは苦々しく思う。
今現在
自分の隣にたたずむこの男は
そう呼んでいい存在だった。
駆け出しの頃初めて共に
盗みをした男とは違う。
長年付き合い
生死を共にし
常に自分の傍らに
在り続けた男だった。
一度としてラウールの期待を
違えたことはない。
リッキーとの再会は
ラウールに苦い記憶を
呼び起こさせた。
初めて組んだ相手に
フリッツP38を奪われ
瀕死の重傷を負わされたことは
これまでの怪盗人生でも
忘れることのできない
屈辱だった。
あの男と失った
フリッツP38を見た時から…
その銃弾がじいやの胸を
撃ち抜いた時から
ラウールは自分の心が
平静さを失っていることを
自覚していた。
今さら過去になど縛られない。
過去にけじめを
つけに行くだけだ。
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