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そう思ってロナルド達と
共にここへやって来たが
身体中を駆け巡っているような
整理のつけられない
苛立ちがあった。
それを悟られるのが嫌だったから
彼はただ沈黙している。
背後の茂みに
別の気配が生まれた。
振り返ると
ルースが立っていた。
ルース:
ラウール。
リッキーがあんたを呼んでいる。
『館』に来てくれってさ!
ラウール:
オーケイ。
じゃ、後は頼んだぜ、ロナルド。
そう言ってきびすを返しかけると
まかせとけよ!
と答える声がした。
改めて振り返ると
ロナルドは顔を
こちらに向けていた。
ロナルド:
今回は
俺の手は借りたくねぇんだろ。
お前の好きにしろよ。
口の端に笑みを浮かべて
彼は言った。
考えていることは
お見通しだと言わんばかりだ。
おそらく彼は
最初からラウールの真の目的など
気付いていたし
自分たちが任されている
金塊奪取計画がラウールにとって
おまけほどの位置づけにも
なっていないことを
知っているのだろう。
ラウールは
にやりと笑い返しながらも
じりじりと胸が焦げつくのを
感じていた。
自分の考えを先読みする
ロナルドの態度は
いつもと全く変わりがない。
それがラウールを苛立たせる。
おめぇの我が侭には呆れるよ
と言いながらも
結局は好きにさせようとする
ロナルドのさりげない言動が
ひどく疎ましかった。
おかしいのは
自分の心だと知っている。
自分はいつだって
好き勝手にやって来たし
彼らはいつも文句を言いながらも
付き合ってくれていた。
今までと何ら変わりがないのに
なぜか苛々している。
相棒という存在に
ひどく神経質になっていて
ロナルドやレイナと
距離を置いていたいような
煩わしさが感情の先に立つ。
そんな乱れた感情まで
理解されていることが
なお気持ちを
ささくれ立たせていた。
悪循環だった。
ラウール:
早いとこ
けりをつけなきゃな…
ルースについて
館へ引き返しながら
ラウールは口の中で呟いていた。
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