182人が本棚に入れています
本棚に追加
「ああ」
「両親は?」
「……。あんたに教える必要はない」
「……バラすぞ?」
「遠くに住んでるんだ」
この……悪魔めっ!
「遠くに住んでる?」
「ああ。俺は両親から嫌われててな、中学を卒業した瞬間に、家から追い出される予定だったんだ。夜中、トイレに行く途中、そう聞いた。だから、俺は地元を離れ、ここの櫻田高校を受験し、合格した。元々、そんなにレベルが高い所じゃないしな。住むとこも、ここの大家さんが提供してくれたし。まぁ、つまり俺は、親に追い出される前に家を出たんだよ。世間では追い出されたって思われてるけど」
言い終わり、俺は台所に行って自分の分のお茶をコップに入れ、飲んだ。
「……ま、こんな能力が備わってたら、誰だってそう思うよな」
自分の手を見て、少し念じると手には小さい水玉が出現し、プワプワと浮かんでいた。
それを消し、俺は高品の方を向いた。
「あんたはこんな能力を持つ俺を見て、気持ち悪いとか言わないんだな。それどころか、下僕にするとは……、変わった奴だな」
「よく言われる」
俺の言葉に、高品は苦笑した。
「あたしは、冬真君のことを気持ち悪いなんて、思ってないよ。最初はアレを見た時、ビックリしたけどね。それに……身近にあたしと同じ人がいるって知ったら、安心した」
「同じ人?」
「あ、いや、その……! な、何でもない! 何でもないよ~?」
「ふぅん。ま、いいけど」
俺は何気なく、近くにあった目覚まし時計を見た。
高品と話しているうちに、30分ぐらい経ったようだ。そろそろ朝食を作るか。
「高品」
「ん? なぁに?」
「あんたも朝食、食べるか? 作るぞ?」
聞くと、高品は驚いたような顔をした。
「えっ!? 冬真君、料理出来るの!?」
「出来なきゃ、一人暮らしなんぞ出来てねぇよ。食べてくか? と言うか、食べるよな?」
「い、いや! 悪いよ! あたしが作る!」
「あんた、料理出来るのか!?」
素行不良なのに……。人は見かけに寄らないというやつか。
「まぁね。昔は大変だったけど、今は高級ホテルで働くシェフと肩を並べられるほどの実力だよっ!」
「すげぇ! あんた、ただの不良じゃなかったんだな! 成績優秀って時点で、ただの不良じゃないとは思っていたが、まさかそれほどとは……! お見それいたしましたぁ!」
バッ! と素早く、俺は高品を敬うように土下座した。
最初のコメントを投稿しよう!