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……だが、
「……だが、ここは俺の家で、あんたは一応、客人。なので、俺に作らせろ。どぅゆうあんだすた~ん?」
「……一理あるね。……分かった。理解したよ」
よしっ! 俺の勝ちだ。
「でも、今度はあたしが作るからね!」
「おう! 楽しみにしてるぜ、高品」
そう言って、俺は台所に向かった。
前日にセットしていたご飯はしっかり炊き上がっているようだ。
かぱっと炊飯器の蓋を開けると、もわ~といい匂いが。
それを確認して、蓋を閉めた途端、
「……。……ねぇ」
高品が声を掛けてきた。
「んー? 何だ?」
手を止めず、俺は高品にそう言う。
「あの……さ。あたしのこと……下の名前で……呼んでもいいよ……」
高品は微かに赤くなって、そう言ってきた。
「んー。そこまで俺ら、親しくないぞ?」
「で、でも! あたしは……君のことを“冬真君”って呼んでるよ?」
「そういやそうだったな」
気付かなかった。何故なら、俺の男女の友人の多くは、俺のことを“冬真”と呼ぶからだ。そのせいで、誰に呼ばれても、違和感を感じなかった。
「……あたしたち……友達。だから……さ、呼んで欲しいなって……」
「……」
一旦、手を止め、俺は高品の方を向いた。
顔はさっきよりも赤くなっており、見てて可愛いと思ったのは、きっと彼女にも女としての色気があるからだろう。
「……。分かった」
俺は高品に近付き、頭に手を置いて撫でた。
「じゃあ、朝食が出来るまで待ってろよ? 楓」
そう言って、高品……じゃない。楓の頭から手を離すと、楓はみるみるうちに花が咲いたような笑顔になった。
「うんっ! 待ってる!」
その声を背に、俺は朝食を作りに掛かった。
朝食を食べながら、テレビのニュースを見るのは、俺の習慣だ。
楓も俺の作った朝食を食べながら、テレビを見ている。
今のところ、目ぼしいニュースはない。
『さて、次のニュースです。蜜谷香寺(みつやこうじ)、高梨屋(たかなしや)、雛乃崎(ひなのさき)、有栖川(ありすがわ)のかの四大家系が協力し、体感ゲームを作るようです』
「ほぅ、体感ゲームか。四大家系もやりやがる」
「四大家系って?」
世間に疎いのか、楓はさっぱり何も知らないといった感じに、俺に聞いてきた。
「楓、知らねぇの? 四大家系のこと」
聞くと、楓はコクリと可愛らしく頷いた。
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