休日、俺はあいつと二人で……

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「勝負……だと?」 何故、いきなりそんなことを言うのか理解出来ず、俺は首を傾げた。 「そ、勝負。勝った人は、負けた人に言うことを聞かせる権利を獲得する!」 「ありがち過ぎて、逆につまらんな」 はぁ、と息を吐き、さっさと行こうと楓に背を向けた瞬間、ピーン! と俺は気付いた。 「……もし、俺が勝ったら……あの時に収めたデジカメの写真を消し、下僕を取り消すか?」 「あー、デジカメの件は無理。もう、デジカメの写真はパソコンのデータフォルダに入れたから。だから、デジカメに入ってる写真を消しても、無意味。君はあたしの下僕のままだよ」 「……」 「あ、でも、勝ったら、それ以外、何でも聞くよ? 彼女にでもなるし、えっちなことも受け入れましょう!」 「知り合いになったばかりの奴に、そんなものを求めるかっ!」 俺は胸を張る楓に、ツッコミを入れてから、今度こそ背を向けて歩き出した。 「あ、待ってよ~! もう、冗談だってばぁ~」 そんな俺の後を、楓は笑いながらついてきた。 カウンターにいた店員は、俺と楓を見て、何故かクスクスと面白そうに笑っていた。 「よぉし、まずはバッティングだ!」 野球でよく使われそうなヘルメットを被り、バットを持って、楓はネットが張られた一室のバッティングルームに入った。 たまたま一緒に歩いていて、バッティングを見付けた楓は、すぐに近くの係員に声を掛け、バットとヘルメットを持ってやってきたのだ。 飛んでくるボールの数は、一室50球。球速は120キロという、まぁ、妥当な速さだ。その50個の球のうち、何個ホームランと書かれた板に当てることが出来るかを競う勝負だ。 トップバッターは楓。やけに自信満々だから、俺は後ろから傍観させてもらうことにした。 楓はぐるぐると肩を回した後、バットを構えた。それと同時に、前方に置いてあったボールを放つ機械が動く。そして、その10秒後、ガッコンという音とともに、一球が飛んできた。 「へいやっ!」 楓はバットを思い切り振り、バットはボールにジャストミート。 打たれたボールは、そのまま上へ上へ上がっていき、そして、 ドカッ! 『パッパラパー! ホ~ムラン!』 一球からホームランを出しやがった……! 「……」 ポカーンと、呆気にとられる俺。開いた口が塞がらないとは、まさにこのことだろう。
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